転職して約二年たったSEの所感と、今転職を考えている人たちへ

最初に

 

誰だあんた?

2年前の大手に分類されるユーザ系SIerから、webパッケージ開発やってるベンチャー企業に転職した工業大学情報系学部卒です。
 

この記事は?

「退職(転職)エントリはよく見かけるけど、その後を書いた記事ってあんまりない気がする」
「転職するか否かで迷っている人って、[転職したその後]が気になっているからなんじゃない?俺も気になってたし。」
「だったら、(自分で自分の転職後の感情を書き連ねるついでに)俺が書いてやろうじゃねえか!」
といった背景のもと書かれた文章です。
 

「転職してどうだった?」

後悔は0だが不満はある

転職した結果としては今のところ全く後悔していない。前職より仕事の量も内容も大変だし働く時間も幾らか増えたが、社内の人や環境にはだいぶ恵まれたのでそこまで悪くない環境で働けている。
 
しかし「不満が無いか」といわれるとNOである。給与がそんなに高くない、有能な人間と無能な人間の給与差があまりない、クソ顧客との仕事がストレスたまる、気に食わない上司が(少数だが)いる、その他前の職と変わらない不満は、いくつか残っている。少なくとも僕がこの会社に新卒で入っていたら、人事ガチャでハズレを引いていたら辞めていただろうと、そう思う程度には不満がある。
  

かといって今すぐ転職したいとは思っていない

「じゃあ今すぐ転職したいか」と言われると(少し悩むが)これもNOである。
理由は「ここより悪い環境はいくらでもありそう(事実として前職がそう)」だから。
 以下に、今の職場で気に入っている点を列挙する。
 
  1. 服装自由
  2. みなし残業制度+仕事が終わってりゃ早く帰ってオッケーの風潮*1
  3. 要件定義から保守まで殆ど裁量を与えられている環境*2
  4. 会社のドリンクサーバでコーヒー飲み放題*3
  5. 音楽聞きながら仕事できる
  6. 飲み会代は全額会社負担*4
  7. 平均年齢が30前後でみんな若いし技術が出来る人が多い。なので話もソリもあう人の割合が多い。*5

 

ずらりと「気に入っている点」を並べたが、これらをすべて揃えてなおかつ自分の不満が解決できるような職場を見つけるのは難しく、
「慎重に転職先を選ばないと今より悪くなるかもしれない」と思う程度には良いと感じる職場だからだ。
 
・何より、会社内で関わっている人の多くが(少なくとも表面上、仕事上は)友好的で、(各々の感情や思惑を測り切れてはいないものの)一定以上の評価をくれていることがかなり精神的安定に繋がっている。*6
 
・そんなこともあって、「この会社、今いるところより絶対良い!」と確実に思える会社から内定をもらえるまでは居ようかなと思えるくらいには気に入っている。*7

 

今転職を考えている人たちへ

今いる会社の不満と「まぁここは悪くないかな」という点を列挙する

・上記の通り、「今の職場のここが嫌!」というのと「今の職場のここは悪くない」というのをとにかく列挙する。*8
 
これ以降、
「今の職場のここが嫌!」は「転職によって改善する可能性があるもの」
「今の職場のここは悪くない」は「転職によって失われる可能性があるもの」
として、文章を読み進めること。
 

現状を把握するために情報を集める

・列挙が終わったら、「[今の職場のここが嫌!]は、解決のしようがあるのか」「[今の職場のここは悪くない]は、ほかの場所でも維持できることなのか」という観点から、情報を集めていく。
 
・情報源は以下の4点を軸にする。
1.自分と年齢差がない、同じ会社の人間の境遇(会社の同期、先輩、後輩)
2.自分と年齢差がない、違う会社の人間の境遇(学生時代の友人、先輩、後輩等)
3.自分と年齢差がある、同じ会社の権力者の境遇(上司、役員等)
4.編集者の意図が可能な限り排除された、数値に基づいた統計
 
1.は転職をしなくても不満を解消する、理想を成就する可能性を探すために有用で、
2.は転職をすることで不満を解消する、理想を成就する可能性を探すために有用で、
3.は1.に基づいて行動を起こすときの足掛かりとして有用で、
4.は2.に基づいて行動を起こすときの足掛かりとして有用。
 
例えば1.の人間である、別の部署の同期との会話で、以下のような会話をしたと仮定する。
「うちの部署、こういう人がいてめちゃくちゃ嫌なんだけど、そっちの部署でもいる?」
 
これに対して、
「うちにもいる、嫌だよなーそういう人って。」
と返ってきたら、「社内において自分が嫌だと感じる人は他にも存在し、それを嫌だと思っている人間もまた存在する」という判断を一先ず下して良いだろう。
これにより、自分が嫌だと思っていることは同じ会社の他の人も嫌だと思っており、その認識は違っていないが、部署を変えただけではその「嫌だ」と思っている問題は解決しないかもしれない、といった指標が一つ出来上がることになる。
 
例えば2.の人間である、自分とは別の企業に行った同じ大学、同じ学科の友人*9との会話で、以下のような会話をしたと仮定する。
「今の俺の仕事、給料がこれくらいしか出ないんだけど割に合わない気がする。」
 
これに対して、
「(割に合わないという点には同意したうえで)俺も給料は同じだけど、俺はそれに加えてこういうこともやってて、割に合わなさすぎるよ。」
と返ってきたら、「別の会社では自分よりも割に合っていないことをやっている人が存在する」という判断を一先ずして良いだろう。
これにより、今割に合わないと感じていることは他の会社に勤めている人もそう思っており、それは転職しても解決しないかもしれない、といった指標が一つ出来上がることになる。
 
 ・・・といった具合に、一人でも多く、信頼できる人とコミュニケーションを取り、たくさんの情報(指標、判断基準)を集めていくことで、
「自分の今感じている不満は、ほかの人も不満と感じているのか」
「その不満が存在しない環境は、存在するのか*10
といった判断材料を増やしていく。
 
 
以下に、4.に該当する情報源をいくつか記載する。
厚生労働省:労働統計要覧

https://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/index-roudou.html

日本全体の分野別、年代別の給与、残業時間、昇給幅が全部載ってるサイト。

自分の給与や残業時間は業界平均でどれくらいのもんなのかを比べるのに有用。

 

東洋経済就職四季報
 
日本にある主要企業の情報の開示率、採用数、有休取得、採用実績校、業績、残業時間がすべて載ってる本。
気になっている特定の企業の状況を調べる際に有用。
  

「転職しなくとも列挙した不満が解決できるか」を考える

・最初に記載した過去の記事でも言及しているが、リスクとコストに関しては部署移動<<<転職であるため、部署異動で解決できるような不満*11しかないなら、まずは基本的に前者を考えたほうがいい。
 
・企業規模が1000人を超えるような大手企業だと、「企業内公募」という、企業の中での求人をやっていたりする場合がある。
 その制度は、「受け入れ先の部署の責任者と異動希望者が同意すれば、異動希望者が所属している部署の同意を得ずとも異動ができる」という前提条件がある場合がほとんどのため、人間関係の不満や、仕事内容の不満はこれでリセットできる可能性がある。*12
 
・企業内公募が無かったとしても、信用できる(可能なら権力を持っている)上司に相談すれば、何かしらの道が開ける場合はある。
 

「転職するしかない」となったら

・まずは素直に転職エージェントに登録しよう。勝手に求人票とか持ってきてくれるので楽。

 

・届いた求人票を見比べる際には以下の点を今自分がいる会社と比較する。

設立年度と社員数の増加具合

・設立してから間もない会社ほど新しい何かを取り入れることに寛容である場合が多く、粗削りや不安定な部分(社内制度や就労環境等)が多いという判断をして良い。

・社員数は一言でいうと「入社した後の会社内の情報*13の集めやすさ」「フットワークの軽さ」「会社内での仕事のバリエーションの多さ」に繋がる。多ければ多いほど情報は多く、フットワークも重くなる。しかし会社内での仕事のバリエーションも多くなるので、「転職した後会社に馴染めない、または別の不満が出てきた」といった時に、「もう一度転職せずに、部署異動で解決できる可能性」が高くなる

・また、社員数を設立してから立った年数で割ると、「企業の拡大速度」の概算を測ることが出来る。この数値が高ければ高いほど、「急な成長(事業拡大)」を行っている可能性が高い。*14

総括すると、

古い企業から新しい企業に入る場合は、古い習慣や技術などは無くなる可能性があるが、制度や経営上の安定がなくなる可能性があり、

新しい企業から古い企業に入る場合は、制度や経営上の安定は得られる可能性はあるが、古い習慣や技術に付き合う必要性が出てくる可能性がある。

人が少ない企業から多い企業に入る場合は、フットワークの重さや社内の情報の多さに翻弄される可能性があり、

人が多い企業から少ない企業に入る場合は、万一転職後「こんなはずじゃなかった」となったら、転職以外の解決策がなくなる可能性がある。

という認識でいると良いと思う。

 

出資元、取引先

どういった分野の人間と仕事として関わることになるのか、という指標になる。

雑な判断方法になるが、頭の良さそうな奴らを相手にする仕事は自分たちがミスった時に弱みを握られやすいが無駄な説明を省ける可能性があり、

頭の悪いやつらを相手にする仕事は、バカの介護をする手間が発生する可能性があるが、ちょっとしたミスをしたときにごまかせる可能性がある。

 

出資元か取引先に銀行がある企業には入るな。万一入ったら銀行とは絶対に関わるな*15

 

(SE限定)作るシステムの形態と、触る人数

形態というのは、俗にいうB to B*16 (to C*17 )やB to C*18といった、「誰が使うシステムなのか」のくくりのことである。Cが絡むと不特定多数の一般ユーザーが触ることを想定した作りをしなければならなくなり、セキュリティや負荷分散等、構築の難易度が上がる傾向がある*19。これは、「そういった難しいことは考えたくない」という人にはデメリットになり、「そういったことがやりてえんだよ」という人にはメリットになる。自分はどちらの人間なのかはしっかりと持っておこう。

 

あとがき

「あんたやけにめんどくさいことやってない?」

・そのとおりだと思う。僕が列挙したやり方なんかやらなくても転職できる人はできる。しかしそういう人は転職しようと悩んでこんな記事を見に来ないで、己の力を信じてやっている人ばかりだとも思ってる。*20

 

・なぜ上記のような情報を集めるときの軸を作ったかというと、(個人の経験談だが)不満やストレスを抱え続けたり、辛い思いをし続けたりすると、知らず知らずのうちに視野が狭くなったり、正常な判断が出来なくなってくる場合がある。
 
・そういった自分でも認識できていない問題を自分一人の力で解決するのはほぼ不可能であり、そのために「自分以外の誰か(何か)」との比較を行うことで、自分の現状を把握することがとても大事だと考えていて、今回はそれを文章化した、といった背景がある。
 

転職サイトや新聞の調査は「意図的な偏り」がある前提で見る

 ・日本〇済新聞が「今年の夏のボーナス総支給額は60万!」とか言ってたり、マ〇ナビ転職が「転職してからの給与の上昇率は平均40%!」とか言ってたりしている時がある。こういうデータは決して間違ってはいないが、「データの採取の対象がそもそも偏っている」という時がある。*21
 
 
・こういった偏りは腐るほどあるので、企業が出しているデータは、必ず何を対象として取っているのかを見ること。

「転職(就活)は時の運もある」という説

 ・僕は2年前の転職活動の際、定期的に出資元からの天下り連中がやってきて、その天下り連中に会社の方針をコロコロ変えられる環境に嫌気がさしていた。なのでそういうことがなさそうな会社を選び、エントリーシートを送っていた。
 
・その際、一番入りたいと感じていた今時流行りのweb系ベンチャー企業(以下、企業Aとする)に落とされた。もちろん結構へこんだが、それでも「この会社入りてえなぁ!!」という思いはずーっと心にあったので、別の企業に転職が決まって後、働きながらも企業Aの求人を定期的にチェックしていた。
 
・しかし今年の初めにその企業に異変が起きた。ブラック研修で名高い企業(以下、企業B)が企業Aと資本業務提携を行い、企業Bが企業Aの株式を20%購入。結果として企業Aは企業Bの関連会社となってしまい、企業Bからの天下りによって役員が増設されていた。
 
・もし自分が転職の時に企業Aに入ることができていたら、転職前の不満をまた抱くことになっていたかと思うとゾっとする。そういった意味では、転職(就活)は時の運もあり、落とされたからと言って理想の人生を歩めないわけでは決してない思っている。
 

最後に 

・自分のコンディションがよくわからなくなったら、
1.食事
2.睡眠
3.趣味
4.仲の良い人との交流
上記4つのうち、支障が出始めたものがいくつあるかをカウントしよう。2個あったら病院に行ったほうがいい。3個以上あったらあらゆる手段を尽くして仕事の量を調整してもらったほうがいいかもしれない。
 
・特定の事象が発生した時に「辛い」と思うことは何一つ悪いことでは無くて、「辛い」と感じたらとにかく休めるだけ休んだほうがいい。健康な肉体と精神はお金では買えないので、何よりも大事にしたほうがいいと思っている。
 
転職しようか考えている人たちが、この記事を見て、良い未来へ進むための足掛かりとしてくれたら、僕はとても嬉しいです。
 

*1:加えて去年今年の僕個人の平均残業時間は5時間以下、これは人事ガチャ運に恵まれた結果でもある。

*2:プレッシャーがある上に給与が見合っていないのは欠点だが、少なくとも自分のレベルはぐんぐん上がっている気がするし退屈はしない

*3:あまり美味しくないが、コーヒージャンキーとしては最高にうれしい

*4:一人頭5000円くらいの飲み会でも会社から金が出る。ウマイ。

*5:もっと言うと老害やクソババアがいない。

*6:

・前の職場はSI(死の未来が見えているインターネットエクセルマンの略)企業であり、コーディングの機会にあまり恵まれなかった。
・そういったこともあり、転職直後、がっつりコーディングの業務を割り当てられた際に、結構稚拙なミスを連発した。
・しかし、前職の経歴を話して、足りない部分は自主的に勉強して補う姿勢で取り組んでいたら多くの人から寛容な態度で受け入れられた。
 (大学時代に入っていた技術系のサークルでの経験も大いに生きたのもある。)
「まだ若いんだし、これからやっていけば大丈夫だよ」
 という先輩や上司の言葉には、結構助けられた。

*7:残業時間が増える期間が続いたり、人事ガチャでハズレを引き続けたら転職するかもしれない

*8:「労働している時点で悪いに決まってんだろ喧嘩売ってんのか??」という人、気持ちはわかるけど労働者階級に生まれた時点で労働からは逃げられないので我慢してください。宝くじ買おうね。

*9:この相手を、自分とは違う分野で仕事をしている人間に変えると、別業種との差が判明する場合があり、別業種への転職を考えている人はそれを積極的に狙うと良い。

*10:どうすれば解決できるのか

*11:直属の上司がクソである(会社そのものは嫌いではない)など

*12:なにより、企業内の公募は、転職と比較すると、就労環境等の情報が圧倒的に集めやすく、事前に当たりはずれを察知しやすいというメリットがある。使えるのならば使うに越したことはない。

*13:特に厄介なのが人間関係や上下関係

*14:同じ社員数1000人でも、10年前に設立したのと50年前に設立したのとでは、拡大の速度が段違いである。急な拡大は粗削りな制度を生んでしまう原因となり得るので、頭に入れておいて損は無い。

*15:銀行業界は「失敗するとありとあらゆるメディアに晒される」という側面がめちゃくちゃ強いらしく、そのせいか失敗をとにかく嫌いとにかく許さない風潮が強い。とっても疲れる。

*16:例:社内会計パッケージ開発

*17:例:他社のECサイト構築パッケージ開発

*18:例:自社webサービス

*19:前職、現職での経験に基づいた判断

*20: もともと「働かないでお金が欲しい」「楽して儲けたい」という心理だが、「特に秀でた技術やセンスもなく、労働を避けて暮らしていけるだけの資産もなく、労働でお金を稼ぐ以外に生きていく術はないので仕方なく働く」といった程度の心理であり、休日好き好んで勉強とかをすることはあまりない身である。そんな身なのでバリバリの技術企業に行ってやっていけるだけのパワーはないと考えている。

*21:たとえばボーナス云々は「経団連に所属している従業員数1000人以上の企業のみ」を対象としていたりする。給与の上昇率は中小企業から大手企業に転職した人だけを取っていたりする。そりゃ高くなるわ。